In Time/タイム

In Time(2011)

タイム

人類が老化を克服した近未来。人は25歳で成長を止め、体内時計の残り時間によって余命が設定されていた。裕福な者が永遠の命を得る一方、貧しき者には早すぎる死が待ち受ける世界。そんな不合理に直面した貧しい青年は、社会を支配するシステムに立ち向かおうとして、ある大富豪の娘と出会う。

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"Time is Money" "時は金なり"という言葉がありますが、この映画はまさにこの言葉が具現化された物語です。働けば給料の代わりに時間が与えられ、物を買うときも電車に乗るときも、お金ではなく自分が持つ残り時間(=寿命)が消費されていくという斬新な世界観。例えばコーヒー1杯が400円..ではなく4分。自分の寿命を4分削ってコーヒーを飲むという選択をするわけですね。この設定を聞いただけでもなかなか面白そう、今までになさそうな作品だし一度は観てみようと思った人も少なくないのではないでしょうか。

注意:ここからネタバレを含みます。

科学技術が進歩して人類は遺伝子操作により全員25歳で老化が止まる時代に。25歳になると腕に自動的に刻まれた1年という寿命のカウントダウンが始まり、この時間が0秒になった瞬間死亡するという設定。時間を増やすために日々働いてその日暮らしをする貧困層と、時間が何百年も残っていて永遠に生きられる富裕層がいて、この世界でもはっきりと貧富の差というものが存在しているのはおもしろいですね。

主人公のウィルはスラム街で母親と貧しい生活をしていました。この母親も25歳の容姿で老化がストップしているので2人がカップルみたい...でも親子なんですよね。というかその他の登場人物も全員25歳のビジュアルという世界感が新鮮...!

ある時スラム街のバーの中にハミルトンという名の富裕層がいることに気付きます。その日暮らしが多いこの地域では時間を奪うために富裕層が襲われてしまうことも多く、案の定ハミルトンも襲われてしまうのですが、ウィルが助けました。話を聞くとハミルトンは自分の人生は長すぎてこの世界は退屈だと言ってウィルに116年を与えそのまま死んでします。なるほど、自殺したい人から時間をもらうことができるのですね。

この、"他人に自分の時間を分け与えられる"という設定もおもしろいですね。もちろん自分の時間はその分消費されてしまいますが、腕と腕を重ね合わせることで好きな分だけ寿命を分け与えられるのです。自分の親や恋人など愛する人の寿命を延ばせると考えるとありがたいですが、反対に寝てる間に見知らぬ者に襲われ無理やり時間が奪われたりしたら...と思うとなかなか恐ろしい仕組みでもあります。全財産を奪われても借金をしながら何とかして生きていけるわけですが、全時間を奪われるとその時点で即死となってしまうわけですから。

116年もの時間を手に入れたウィルは母親とともに富裕層地域へ行こうとします。しかし、急な価格高騰のせいで貧困層にいた母親はバスに乗ることもできず時間はどんどん減っていき...ウィルが時間を分けるために会いに行こうとしますが、あと少しのところで時間が0になってしまい....もうお互いの姿も目の前に見えていたのに腕を重ねる時間がなく母親はそのまま亡くなってしまいました。目の前で母親が命を落としてしまうというかなり残酷な映像ですが、きっとこの世界ではこういうことが日常茶飯事なんだろうなと推測でき、この作品の設定そのものが象徴されているようでとても印象的なシーンでした。

一方で私だったらもう少し余裕をもって待ち合わせする...とか、誕生日だから着飾りたいのも分かるけど走りやすい服装にすれば間に合ったかも...とか色々余計なことを考えてしまいました。究極を言えばウィルがその日の朝1秒でも多く母親に分け与えていれば彼女は生き残れたと考えると残酷な世界です。

母親の死から富裕層に復讐したいと考えたウィルは一人で富裕層地域へ行き、カジノで勝って1,100年という寿命を手に入れました。ここで超金持ちな銀行経営者フィリップと出会いパーティーに招待されるのですが、ハミルトン殺害容疑をかけられ時間監視局(この世界の警察のようなもの)に追われてしまいます。逮捕されそうになりながらも、フィリップの娘であるシルヴィアを人質にとりスラム街に逃げ込みました。

刺激的な生活を求めていたシルヴィアは次第にウィルに気を許すようになり、2人はこの世界の仕組みを壊したいと思いはじめます。フィリップの銀行から膨大な時間を奪ってスラム街の仲間たちに分け与えることを繰り返し、フィリップ自身の時間も奪いますが時間監視員に奪われて...。色々あったけど最終的には1日分の時間だけ残った状態で、貧困層に分け与えるために再び銀行強盗を繰り返す...というラストでした。

フィリップから時間を奪った時点では大富豪なわけだからスラム街の仲間に多少時間を分け与えるのも理解できますが、残り1日となってもなお強盗してまで人に寿命を分け与えたいと思うものでしょうか...?と残念ながら少々疑問が残る終わり方だったように思います。正義感の強いTHE主人公というキャラは観ていて悪い気はしませんが。

ウィルやシルヴィアの人生観についてはさておいて、この映画を観たことで自分自身の人生についても色々と考えさせられました。寿命が長すぎて退屈だと言う富裕層と、対称的に時間に追われながらも必死に生きたいと願う貧困層。私は退屈にだらだら生かされているよりも、生きたいと思いながら必死に生きている方が幸せだろうと思います。寿命がない人生が素晴らしいとは限らないし、今を必死に生きることが大切であるというメッセージが込められていたように感じました。

自分が一番輝ける25歳という時期で老化が止まるなんて羨ましい..と思っていられたのも最初の数分だけでしたね。寿命が常に腕に表示されているなんて冷静に考えるとゾッとしますし、いつまで生きられるか分からないからこそ人生は楽しめるんだと思います。

というわけで、時間に追われる世界の物語というだけあって映画自体も何だかあっという間に終わってしまったような印象でした。せめて2時間半ぐらいの映画にするかドラマシリーズにして色々詳細に描いてほしいと感じた部分もありましたが、あまり細かい設定は気にせずに斬新な世界観を楽しみたいという方にはぜひ観ていただきたい映画です。