Tick, tick... BOOM!/チック、チック…ブーン!

Tick, tick... BOOM!(2021)

チック、チック…ブーン!

1人の若き青年は、一流のミュージカル作曲家として成功することを信じていた。だが、30歳を目前に控え、時間ばかりが過ぎていく現状に焦りを募らせていく。さらに、恋と友情の葛藤を抱える中、彼は創作と真っ向から向き合おうとする。

www.youtube.com

私自身もアラサーの身であり、30歳を目前にして焦る気持ちは当然共感できます。このまま今の仕事を続けていて人生楽しいんだろうか、老後資金をどうやって貯めていけばいいんだろう、出産はいつのタイミングがベストなのか、、考え出すとキリがなく無駄に焦ってしまうので考えるのを一旦やめて、友人の喜ばしい報告を聞く度にまた自分の人生について考え焦る、そんな毎日です。

主人公のジョナサン・ラーソンはミュージカル映画の作曲家であり、彼が有名になる前、ちょうど30代になろうとしている頃の実話に基づいたお話です。有名な芸術家って若い頃はアルバイトをしながら経験を積んで、何年も経ってからやっと成功する大器晩成型が多いイメージだけど、同い年の友人の人生と比較するとこの年齢ぐらいから焦りが大きくなってくるのも理解ができます。個人的にミュージカルは退屈だと感じてしまうことも少なくないのですが、年齢的に今の自分と重なる部分がありそうだし、主人公がどんなふうに生きて成功を掴んだのか気になってこの映画を観ることにしました。

注意:ここからネタバレを含みます。

冒頭でジョナサンは「どこに行ってもチックタックとカウントダウンされるように音が聞こえる。」と話します。始まりから彼の焦りが感じられます。オリジナルのミュージカル作品を書くジョナサンですが、どの映画会社やスタジオからも作品を受け入れられず苦戦している様子。

一方、ジョナサンの親友であるマイケルは俳優志望でしたが早めに見切りをつけて大手会社に就職していました。夢を諦められないジョナサンと生活の安定を優先させたマイケル、対照的ですね。私だったらマイケルのような選択をしたかな。だからこそ夢を追い続ける人の何があっても諦めないメンタルの強さには尊敬します。

また、ジョナサンにはダンサーであるスーザンという恋人がいました。彼女は怪我で大きな舞台に立つ夢を絶たれてしまうんですが、後にダンス教師になるチャンスが訪れます。バークシャーに行がなければいけないと分かりジョナサンに伝えますが、ジョナサンは曲作りの仕事で頭がいっぱいで回答を保留にします。スーザンは、ただ行くなと言ってほしかっただけなのに考えてくれないジョナサンに不満を抱き、別れを告げます。

この作品はミュージカルなので音楽がいくつも出てくるんですが、曲調は明るいものが多い中で歌詞からは不満とか焦りが感じられるんですよね。当時のジョナサンの状況が素直にそのまま歌にされている感じがします。

彼女とはうまくいかないし、曲も全然思いつかないし、親友マイケルとは口喧嘩になるし、お金がなくてアルバイトしなきゃいけないし、何やってんだろう俺...的な感情でさらに焦ってしまいます。

それでもジョナサンがここまで諦められない理由ってなんだろうか。有名な作曲家であるスティーヴン・ソンドハイムに過去に曲を褒められていたシーンがありました。その道のレジェンド的存在に褒められると何があっても前向きになれるんだろうな〜。

私が衝撃的だったのは、ジョナサンが35歳で亡くなってしまうという事実。冒頭で亡くなる前の話であることはわかっていたのですが、まさかこんなに早く亡くなった人の話だったなんて...!そう思うと30歳前後で焦りを感じながらも当時精一杯頑張ったことは決して間違いではなかったんですよね。亡くなる前に成功を収め、彼の努力や苦労は充分報われたと思います。

自分の人生を照らし合わせて考えてみると、新卒の頃から仕事に関しては明確な夢がなく、常に生きるために仕事をしている感覚があります。それが良いとか悪いとかではなく、もしジョナサンのように数年で人生が終わってしまうなら...と考えると、死ぬまでに成し遂げたいことが頭の中にいくつか浮かんできたのです。将来の不安をなくすために安定した生活を優先させすぎて、今やりたいことを見失っているのかもしれないですね。

実話だからこそ今の自分に「そんな人生でいいのか」と問われているようなシーンもいくつかありました。人生の分岐点に立っている人や夢を諦めかけている人には特に参考になる映画だと思います。