Look Both Ways(2022)
2つの人生が教えてくれること
大学の卒業式の夜、妊娠検査薬を使ったナタリー。妊娠していた場合と、していなかった場合の彼女の人生が2つに分かれ、並行してそれぞれの物語が展開する。
さてさて、記念すべき第1回目の鑑賞記録は最近観たこちらのNetflixオリジナル映画から。
28歳の私としては、30代を目の前にして妊娠や子育てというワードはより身近になった気がします。実際この歳になると出産して休職し子育てをしている知り合いも多いです。またこの作品とは関係ない話ですが、最近"OutDaughtered/5つ子ベビー成長記"というアメリカの5つ子ちゃんの成長を記録したドキュメンタリー番組にはまっていて、母親の偉大さとか協力的な夫の存在の大きさだとか、家庭を持つことの大変さやすばらしさをしみじみと感じられるお年頃になりました。
そんなわけで映画タイトルとあらすじ見た瞬間、この手の映画は自分がママになる前に参考までに観ておくべきだ、と思ったんです。
女性として生きていく上で妊娠って一二を争う大きなライフイベントですよね。主人公の女の子が妊娠していた場合とそうでない場合の2通りの人生を、1本の映画の中で描くというあまりないタイプの作品です。
注意:ここからネタバレを含みます。
大学の卒業式の夜パーティーがあるんですが、ここで主人公ナタリーが具合が悪くなり心当たりのある彼女は妊娠検査薬を試します。検査結果から、妊娠していた場合とそうでない場合、2通りの物語が描かれていきます。
お相手は男友達のゲイブ。ナタリーとは恋愛感情は一切なしの単なる仲のいい友達で、ある夜お互いにテンション上がってワンナイトしてしまうという何とも大学生だなあというはじまり。
2つの物語が並行して同時進行していく構成になっていて、短いシーンがテンポよく入れ替わるので「今どっちのシーンなの??」ってなりそうなところを、ナタリーの髪型で切り替えがうまく表現されています。
妊娠したパターンではママらしい髪型にと、ロングヘアをカットするシーンがあり、このシーン以降はカットされた短い髪のナタリーが登場すると妊娠したパターンのシーンだとすぐにわかるようになっています。(後半でしれっと髪型が入れ替わります。)
①妊娠したパターン
親友カーラとLAに行く夢を諦め、テキサスの実家で子育てに奮闘。
授かった子の父であるゲイブは子育てにすごく協力的で、ナタリーのこともきちんと考えてくれる優しい人柄。ゲイブはナタリーに結婚したいと打ち明けるんですが、この時ナタリーは断ってしまうんですよね。こんなに優しくて精神的にケアしてくれてる男性逃しちゃうのーーと思う反面、もともと恋愛感情のない相手だから仕方ないよな~とナタリーの気持ちは理解できます。
ナタリー両親もはじめはできちゃった報告に動揺してお怒りなんだけど、産むと決まったらサポートしてくれていい両親なんですよね。
そんな中ゲイブに恋人ができたことを知り悲しむナタリーですが、子育てに追われる中「やっぱり絵を描きたい」と、諦めかけていた夢をかなえるためiPadでアニメーションを書き上げネットに公開します。作品の反響がよかったため大きなトークイベントに呼ばれ、映画祭新人部門に選ばれます。のちにゲイブから彼女とは別れたと聞いて、ここでやっと2人で一緒になることを決心します。
②妊娠してなかったパターン
カーラとLAへ引っ越し夢だったアニメーションの会社で働き始める。更に同僚のジェイクと恋人関係になったりと、物事は順調に進みます。しかし、途中で上司から「作品に個性がない」とクビを言い渡され、しかたなく実家に戻ってiPadでアニメーションを書き上げコンテストに応募。見事新人賞に選ばれます。
一度は遠距離になって別れたジェイクにも、ナタリーは受賞の知らせをメッセージに残します。メッセージを聞いた彼は会場に駆けつけ最終的には復縁してこちらもハッピーエンド。
展開はある程度読めてたけど、最終的に①②両方とも夢を諦めず恋愛もうまくいってなんだかホッとしました。仮に妊娠したパターンだけ夢が叶わない展開だったとしたら、女性として生きる希望を無くしますよね。どっちの人生が良い悪いの話ではなく、どっちの道になっても自分次第で幸せな人生は手に入るというような終わり方で前向きになれるような作品でした。
ナタリーってもともとは計画的に物事を進めるタイプで、アニメーション会社で働くために必要な勉強ができる学部に入ったり、夢に向かって逆算して人生を順調に進んできたタイプなんですよね。そこに突然、妊娠という計画外のイベントが起きてしまったというわけです。ただ、妊娠しても結局は夢であるアニメーション業界で活躍できたし、妊娠することなく計画通りLAに行っても途中で就職先をクビになって計画が崩れたりしてますよね。つまり、どんなに計画的な人でも人生って予定通りにいかない事も多いんです。そんな時どう前向きに踏ん張って生きていくのか、それこそが人生の醍醐味だと改めて感じました。
ナタリーが基本的に前向きで明るい性格のためか、両親やゲイブ、親友のカーラをはじめ周りの人がみんないい人だったなという印象。周りの助けがなければどっちの道でもハッピーエンドはなかったかもしれないし、現実はもっと厳しいんじゃないかと思うシーンもありました。新人賞とかってそんな簡単に取れるもんじゃないよね??ナタリーが相当頑張ったのか、その道の天才なのか。まあそんなことは考えないようにしましょう。1番現実味があったのは、ナタリーの母親の一言。
「一度母親になると、母親じゃない自分には戻れないんだよ。」
そこまで言い切っちゃうのかあ。でも経験者がそう言ってんだからきっとそうなんですよね。その事実には抗えなくても、結果的に幸せそうなナタリーを観ていると救われます。
うまいこと行き過ぎてて若干物足りないと感じる人もいるかもしれないけど、これぐらいぬるめの映画だと気楽に観れるので個人的にはいい作品だと思います。人生の選択に迷ってる人、子育てに忙しく自分の夢を諦めてしまっている人は勇気付けられる作品ではないでしょうか。