The Half of It/ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから

The Half of It(2020)

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから

内向的で成績優秀な女子高生・エリーは、体育会系のクラブに所属するポールに頼まれて、ある女子へのラブレターを代筆することになる。やがて、ポールとエリーの間に友情が芽生える。しかし、彼と同じ女子に思いを寄せるエリーの心境は複雑になっていく。

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昨今Netflixではアジア系アメリカ人が主人公の作品がかなり増えてきて嬉しいです。本作の主人公エリーは中国系アメリカ人で、アメリカ人が想像するであろう"THEアジア人"といった感じのキャラクターです。私自身、海外留学経験がありなんとなくマイノリティなエリーに共感できる部分がありそうだと感じさっそく観てみることにしました。

注意:ここからネタバレを含みます。

アメリカのスクアヘミッシュという白人ばかりがすむ田舎町。エリーは父の仕事の関係で幼い頃中国から移住し現在は高校生。母が亡くなってからは父と2人で貧しく暮らしていました。成績優秀の眼鏡っ子なところがまさに中国系のイメージですよね。

他の生徒何人ものレポートを代筆してお小遣い稼ぎをする日々の中、彼女はアスターという女の子に密かな恋心を抱いていました。アスターはメキシコ系アメリカ人という設定ですが、白人だらけの町で疎外感を感じるエリーが同じくマイノリティなのに人気者で輝いているアスターに惹かれるというのはとてもよく理解できます。

そんなある日、アメフト部の二軍選手ポールから手紙の代筆を頼まれます。アスターにラブレターを書いてくれという依頼で始めは断りますが、父が滞納していた家の電気代を支払うために1度だけと言って引き受けることになりました。そしてここから、手紙に返事が返ってきたことでエリーもやる気になって何通か代筆を繰り返したのちにポールになりすましてアスターとメッセージまで交わすようになりました。

メッセージだけの関係からついにポールはアスターとデートをすることになり、1度目は変な感じで終わってしまいましたが2度目のデートでは途中エリーのチャットに救われつつも最後は自分の力で告白しました。「文面だけの時はアスターも楽しんでたけど会って本人と話したら失敗」パターンかと思っていたので、この辺から後の展開がいい意味で全く予想できなくなりました。

一方でピンポンをしながらお互いの趣味や家族について話し合いエリーとポールが一緒に時間を過ごす中でだんだん仲良くなっていく姿にも青春を感じますね。文化祭の発表のためにエリーの服を選んであげたり、発表当日にオルガンの弦を切られたエリーにポールが舞台裏からギターを渡して助ける場面などからは2人に生まれた友情も垣間見えてほっこりします。

ポールの助けのおかげでエリーのギター演奏にはみんなから大きな拍手が起こり、同級生たちから打ち上げパーティーにも呼ばれます。ここで酔っ払ってしまったエリーを早めに退散させてベットに寝かせてあげるポールもいい友達で最高です。こんなにも性格や趣味が違う2人が仲良くなるという展開がもうすでに微笑ましいですし、2人とも友情を手に入れたんだからアスターへの気持ちは忘れてここで仲良く終わってもいいのでは...と思いましたが...。

アスターがエリーを車で連れ出して2人で小さな森にある温泉(アスターの秘密の隠れ家的な場所)に入るというエリーにとってはドキドキな展開が訪れます。アスターはここで、ポールから手紙が来た時は初めて理解者が現れたと思ったとエリーに伝えます。自分が書いた文章に共感してくれたと知ってエリーは複雑な気持ちでしたでしょう。その後特に何を話すわけでもなく2人で黙って温泉に浮かんでいる時間が素敵でした。

ポールはアメフトの試合で素晴らしい走りを見せて得点に貢献。いつもエリーの自転車を走って追いかけていたおかげでしょうね。試合後エリーはポールに教わった無料でもらえるヤクルトを大量に抱えていて、そこにポールが現れ突然エリーにキスをします。鏡越しにアスターに見られていたことを知り動揺したエリーを見たポールはここでやっと、エリーがアスターのことを好きなんだと気付きます。自分のために頑張ってくれてたエリーを好きになったけど秒で失恋...。このままポールとエリーがくっつけばありそうな展開でしたが、この作品はそんなに簡単には終わりません。

そして教会でのエリーのポールへの発言から、アスターは手紙やチャットが全てエリーの代筆だと悟ります。アスターは怒ってポールの頬を叩き教会を飛び出してしまいました。(そりゃそうだ..。)エリーが、「愛はうとましくて、利己的で、大胆」と名言を残していましたが、この台詞が妙にリアルで共感できるんですよね。

そんなわけで、冒頭でエリーが「言っておくけどこれはラブストーリーでもなければ、誰かがほしいものを手にする話でもない」と言っていたように最終的に誰の恋も実らないのですが、だからといって不幸な物語というわけでもなく、3人ともこれからそれぞれの人生を歩んでいこうとしているところで終わるある種前向きな物語です。

高校生の話でありながらやけに落ち着いている感じがとても見やすい作品でした。よくあるアメフト選手たちの殴り合いの喧嘩や女王様キャラで意地悪な女の子からの陰湿ないじめ、薬物が出てきたり男女がうるさくはしゃぎまくるなんてことも一切なく、終始落ち着いたテンションでありながらも高校生が抱えるリアルな悩みと心の成長を描いた一風変わった青春物語です。

(最後に...作中で登場するこの絵文字の意味が分かる人いたら教えてほしいです..。)

🍍🦉🐛

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